あらすじ
「私は帰る。ここは、私のいる場所じゃない」
黒い海から魔大陸メギド=ノクスへ流れ着いた少女、ノア=リントベル。
彼女を浜辺で拾ったのは、
流れ着いた遺品から持ち主の名を探す《拾名屋》の少女、リィゼ=ノルカだった。
魔族の国。
帰れない者の果て。
外界では、そう恐れられる大陸。
ノアには帰る場所がある。
家族がいる。
身分証もある。
自分の名前だって覚えている。
だから、帰れるはずだった。
――けれど。
漂着者帳へ自分の名を書いた瞬間、
家名の最後、《ベル》だけが消えた。
紙に書いても。
石へ刻んでも。
黒晶札へ記録しても。
残るのは、
《ノア=リント――》
まで。
さらに、故郷の地名が言えなくなる。
乗っていた船の名が思い出せなくなる。
メギド=ノクスでは、それを《失名》と呼ぶ。
ノアは仮の名を与えられ、
魔族たちの制度に保護されながら、
失われた自分の名前と帰還の方法を探し始める。
そんな彼女の耳に、ある噂が届く。
「名前が壊れていても、外界へ帰れる船がある」
帰れる船。
外界から来た回収官。
帰還希望者だけを狙う《名裂き》。
どこへも帰り着けない《旧道》。
そして、帰りたい者たちの名が次々と消えていく。
やがてノアは知る。
この大陸で最も狙われるものは、
金でも命でもない。
「帰りたい」という願いそのものだ。
しかも、失われた《ベル》は消えたのではなかった。
どこかで、
別の漂着者たちを「帰れる場所」へ誘うための
灯として使われている。
自分だけ帰れれば、それでいいのか。
帰ることを諦めれば、安全なのか。
元の名前へ戻れば、本当に元の自分へ戻れるのか。
そして――
帰る場所とは、誰が決めるものなのか。
「魔大陸」と呼ばれた国を、
家名を失った漂着者ノアと、
名を拾う少女リィゼが旅する。
帰るために。
奪われた自分の名を取り戻すために。
そしていつしか、
帰れなかった無数の名を拾うために。
《名前》と《帰属》をめぐるダーク幻想ロードファンタジー。
※公式サイト先行公開、小説家になろう平行連載