あらすじ
南方大陸サルバティア。
古い神々への祈りが残り、
病と貧困が人々の日常に寄り添い、
死者さえ、ときに奇跡を残す土地。
港町ラウ=マリカの古い倉庫で、
一人の荷揚げ人夫が死んだ。
その胸から――白い花が咲いた。
花の香りを吸った老婆の咳は止まり、
傷ついた少年の痛みは消え、
人々はそれを《救い》と呼んだ。
病人は花を求めた。
神官は奇跡を語った。
商人は値段をつけた。
そしてついには、
「死んでも誰かを救えるなら、それでいい」
そう願う者まで現れ始める。
事件を診るのは、聖獣医師リオ=サルヴァ。
彼と行動をともにするのは、
かつて神への供物として捧げられながら生還し、
身体に《花と獣の徴》を宿した少女、マヤ=ルクナ。
死ななかった少女は「奇跡」と呼ばれた。
けれど誰も、彼女に訊かなかった。
――死にたくなかったか、と。
死者から咲く花。
痛みを消す聖油。
古き腐花神の葬送。
生きたまま身体に根を張られていく患者たち。
治すとは、元に戻すことなのか。
痛みをなくせば、それは救済なのか。
命さえ続けば、人は救われたと言えるのか。
リオが診るのは、人の身体だけではない。
神も。
祈りも。
街も。
そして――《救い》という思想そのものも。
善意が罪へ変わる南方大陸を、聖獣医師と生贄だった少女が巡る。
命と罪と救済をめぐる医療幻想譚。
公式サイト先行公開、小説家になろう平行連載