あらすじ

ネル=エル諸海域では、人の《名》は海へ還る。 死者の名。 失われた名。 誰かが忘れた名。 帰る場所をなくし、潮の底へ沈んだ名。 それらは時に名札となって浜へ流れ着き、 貝殻の内側に文字を残し、 知らない誰かの声で、もう一度この世界へ還ってくる。 名札船《ナミル=レイ》で海を渡る少女、ルカ=ネリス。 海から還る《名》を拾う彼女が出会ったのは、 自分が何者なのかさえ分からない少年――エルンだった。 彼の胸に残された、割れた貝殻。 海底から引き揚げられた黒い箱。 名を売らない海賊たちが暮らす霧の港。 そして、流れるはずの名を測り、記録し、海底へ繋ぎ止める《錨記庁》。 航海を続けるほど、ルカは知っていく。 名は、読めばいいわけではない。 失われた名を、必ず取り戻すべきとも限らない。 忘れることで救われる者もいれば、 呼ばれないことで守られる名もある。 そして何より―― 自分自身の名さえ、本当に自分だけのものとは限らない。 名前とは、誰のものなのか。 記録することは、残すことなのか。 忘れることは、本当に失うことなのか。 名が潮のように巡る幻想海域を、 少女と少年を乗せた小さな船が進んでいく。 《名前》と《海》をめぐる海洋幻想航海譚。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/08/30
  • 現在の作品ネル=エル諸海域と潮名の航海士 ―海に還った名を拾う少女と、名を失った少年―