あらすじ
「私の価値は、人を殺せることだけです」
赤子の頃に犯罪組織へ売られ、暗殺者として育てられた十歳の少女・フィア。
名前すら持たず、「四」を意味するフィアと呼ばれて育った彼女にとって、ボスの命令は絶対だった。
殺せと言われれば殺す。死ねと言われれば死ぬ。
それが当たり前だと思っていた。
そんなフィアは初めての暗殺任務に失敗し、瀕死の状態で雨の中を彷徨っていた。
任務に失敗した自分が組織へ戻れば、待っているのは『処分』だけ。
それでも戻ろうとするフィアを拾ったのは、英雄と崇められた元騎士団長にして辺境伯のアルベルト・レインハルトだった。
「子どもを助けるのに、理由なんていらないだろう」
温かい風呂。お腹いっぱいの食事。ふかふかのベッド。
生まれて初めて与えられるものに戸惑いながらも、フィアにはひとつだけ確信していることがあった。
――この男は、自分に誰かを殺させるつもりなのだ。
ところが、いつまで経ってもアルベルトは命令を与えてくれない。
それどころか、
「君が考えて、君自身が決めるんだ」
そう言って、フィア自身に選ばせようとする。
何を食べたいのか。何をしたいのか。そして、これからどう生きたいのか。
命令に従うことしか知らなかったフィアは、アルベルトとの暮らしの中で少しずつ「好き」や「楽しい」という感情を知っていく。
殺すことしか知らない少女と、誰も救えなかった元英雄。
二人の出会いは、やがて王国を揺るがす王位継承争いへと繋がっていく。
これは、傷ついた二人がいびつな家族になり、もう一度、自分自身の手で「未来」を選ぶまでの物語。