あらすじ
夜八時。
創立七十年以上の公立高校、その本館三階西側廊下には「赤靴さん」という怪談がある。
忘れ物を取りに戻った夜、主人公は廊下の奥で、裸足の少女が一人けんけんぱをしているのを見つける。
床には七つの白い輪。
足元には、片方だけの古びた赤い靴。
少女は少し笑って言った。
「それ、こっちまで持ってきて?」
少女には名前がなかった。
だから主人公は、彼女を「メア」と呼ぶことにした。
その夜を境に、少しずつ日常がおかしくなっていく。
学校にしかなかったはずの白い輪が家に現れる。
家族の記憶が食い違う。
防犯映像には主人公しか映っていない。
古い卒業アルバムには、何十年も前からメアと同じ顔の少女がいる。
けれどメアに聞いても、彼女は時々こう答える。
「知らない。」
メアは怪異の正体を知る案内人ではない。
ただ夜の学校で、今日もけんけんぱをしている。
怖いのに、主人公はまた会いに行ってしまう。
そしていつしか、怪談を調べるためだったはずの夜の学校へ、メアに会うために向かうようになる。
――怖いのは、廊下の奥に何かがいることではない。
一度帰ってきたはずの日常が、昨日とは少しだけ違っていること。
今夜も、三階西側廊下から音がする。
コッ。コッ。パ。
「今日も来たんだ。」