あらすじ
会社帰り、竹藪で光る何かを見つけた樹は、そこで見た目だけは最上級に美しい女――ヨミを拾ってしまう。
この国では、満月の夜に女が現れるのは珍しくもない、行政が対応する「事象」のひとつ。生活費は政府負担、住まいは第一発見者――つまり樹が、なし崩し的に引き受けることになった。
ヨミに群がるのは、財力と権力で彼女の歓心を買おうとする男たち。彼らが差し出す品を、ヨミは笑ってすべて却下する。一方の樹は、納豆ご飯を出すだけで、何もしてやらない。それなのに、ヨミはなぜかこの家から出ていこうとしない。
「居心地いいもの。それに、どうせ時期が来るし」
女たちは、いずれ月に帰る。稀に人と子を成せば地上に残れるが、その子は必ず短命だという記録があることを、樹は知っていた。
素っ気ない男と、態度のデカい女。近づいてはいけない理由を知りながら、それでも隣にいることを選んでしまう二人の、不器用な恋の記録。