あらすじ
【32ページ/読了目安15〜20分】
侯爵令息ローレンスの婚約者エリシアは、亡き母の刺繍帳を頼りに、彼の家の倉庫や商人名簿を整えてきた。そこには布の産地や季節、工房の仕事が針目で記されている。けれど仕事は侯爵家の功績とされ、彼女自身は「遅い」「利益にならない」と、華やかな伯爵令嬢カミラに比べられ続ける。
王立織物院で出会った不器用な調査員ノアだけは、刺繍帳に残された工房印を読み解くエリシアの名を、公的な記録へ残そうとした。やがて救貧院へ納められた毛布の不正と、婚約者ローレンスの署名が一本の糸で結ばれていく。
春祝宴のさなか、ローレンスは皆の前で「効率の悪い婚約者は要らない」と婚約を解消する。しかし、彼が価値なしと捨てた針目を読めた男には、もう一つの顔があった。