あらすじ
七月七日。私は三年間付き合っている恋人の桐谷拓海と一緒に、大学時代、学生寮で同室だった森川奈緒の結婚式に出席していた。
ブーケトスの時間になると、司会者が「今日は男女問わず、未婚の方ならどなたでも参加できます」と笑って声をかけた。友人たちに押し出された拓海も輪の中に入り、偶然ブーケを受け取った。
周囲から歓声が上がり、みんなの視線が一斉に私へ向いた。私も、拓海がそのままブーケを渡してくれるのだと思っていた。
ところが彼は私の前まで来ると、リボンをほどき、ひとつだったブーケを二つに分けた。
先に差し出した相手は、妹の佐伯美羽だった。
残った半分が、ようやく私の手に渡った。
美羽は二つの花束を見比べ、大きさがほとんど同じだと確認してから満足そうに笑った。
「これならいいかな」
拓海も笑う。
「お姉ちゃんにあげるもので、美羽の分がなかったことなんてないだろ?」
私は半分になったブーケを見つめた。さっきまで感じていた期待は、もうどこにも残っていなかった。
昔から、美羽が欲しがれば私は譲ることになっていた。部屋も、ペットも、進学の予定さえ同じだった。
今では、私の恋人までそれを当然だと思っている。
「美羽は小さい頃に迷子になったことがあるから、置いていかれるのが怖いんだよ。真帆はお姉ちゃんなんだから、それくらい譲ってやって」
私は手の中の半分のブーケを見下ろした。
でもこれは最初から、全部私に渡されるはずだったものだ。
もう、譲りたくなかった。