あらすじ

築四十年を超える木造アパート。カビと薬物と嘔吐物の染み込んだ一室で、掃部介は死ぬこともできず天井を見つめて日々を過ごしていた。社会不安障害と薬物依存により、彼は社会から完全に脱落していた。 ある日、天井が裂け、フランメ王国の王女メリーサが落ちてくる。転移魔法によって故郷を追放され、すべての魔力を剥奪された彼女は、汚れた畳の上に崩れ落ちた。彼女は腐敗した部屋を見回し、彼にただ一言、命じる。「掃除しなさい」。彼は逆らうことができない。何年ぶりかに部屋を掃除した介は、特殊清掃の古い求人票を見つける。 翌日、介は孤独死のあったアパートへ向かう。薬が切れたとき、天井や壁に黒い「穢れ」が見えた——人間の苦痛と孤独が凝固したものだ。彼は、死者の恐怖が流れ込んでくるのを感じ、嘔吐する。しかし掃除を終えたとき、部屋の空気は初めて静寂に包まれた。それ以来、介は薬なしでも穢れが見えるようになり、奇妙な清掃依頼が彼のもとへ舞い込むようになる。 掃除をすればするほど、メリーサの魂は安定し、その姿は強さを増していく——しかし同時に、彼女の支配欲と怒りが介の身体に流れ込み始める。メリーサは彼を下僕と呼びながらも、その従順さに無自覚な安らぎを見出していた。隣人の檜山すみれは彼を心配する。そして元警官で今は闇金業者の鹿伏守が、彼の能力を商売にしようと近づいてくる。 やがて介は、穢れの中にメリーサの記憶を見る——なぜ彼女が自国を滅ぼそうとしたのか、そして自らの手ですべてを失った孤独を。そして「穢せ」と囁く存在、イシュー。メリーサが消えるのを防ぐため、介は彼女の穢れを自分が引き受けると申し出る。しかし彼女は嘲笑とともに突き放す。「お前が背負えば、お前の世界が終わる」。 何も解決しないまま、介は元の部屋で目を覚ます。借金も、薬も、穢れも、薄れゆく王女の輪郭も思い出せない。それでも彼は工具箱を手に取り、扉を開ける。朝の光の中、頭の中で声が響く。「掃除しなさい」と。物語は始まったばかりだ。この男が掃除を続ける限り、穢れと人の業は終わることがない。

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小説を読もう2026/08/31
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