あらすじ
百年生きた宮大工は、弟子や妻への後悔を残したまま息を引き取った。次に意識が戻ると、そこは狭くぬるい場所。産声の代わりに飛び出したのは「痛い。やめろ」という百歳の本音だった。
中身は頑固な職人爺さん、外見は無力な新生児・蓮(れん)。驚愕した父母と助産師は、「この子が喋ることを絶対に外に知られてはならない」と結託する。蓮もまた、一人では水も飲めぬ身体の不自由さを実感し、家族の庇護を受けざるを得ない。
口では減らず口うるさい蓮だが、誠一と真由の夫婦、そして無自覚に蓮を守る姉・陽菜との何気ない日常の中で、百歳の人生で知らなかった「家族」の形と温もりに触れていく。
病院、実家訪問、デパート、初めての家族旅行。外出はすべて「赤子が喋る」という秘密の綱渡り。しかし、大工として培った技術と眼力は、時に父・誠一を導き、家のおもちゃ棚作りにまで活きる。
二度目の人生は、ずいぶん面倒で、ずいぶん騒がしくて――しかし、悪くない。