あらすじ

深夜の高速道路で、律は原因不明の渋滞に巻き込まれる。事故もなく、工事もない。ただ、何百台もの車が、誰の意志でもなく止められている。 同じ頃、律たちの連合に名を連ねていた金属加工会社の一社が、静かに廃業する。半年前のブラックアウトの夜、緊急支援の枠から漏れた「九社」のうちの一社だった。律は、その廃業に至る因果を、帳簿の上で一つずつ辿っていく。発注元のわずかな値下げ要求が、下請けを経るごとに膨らみ、現場の残業、若手の離職、納期の遅れへと連鎖していく。誰も、露骨な悪意を持っていたわけではなかった。それでも、末端の工場は、静かに死んでいった。 律は、経済記者・神代と共に、その構造の奥にあるトンネル法人を追う。だが、記事という形にする過程で、複雑な因果は、一人の「分かりやすい悪役」へと圧縮されていく。SNSでは、識名という若手インフルエンサーが、その記事をさらに三十秒の動画へと切り詰め、拡散する。理事は辞任し、支援策は動く。単純化は、間違っていたわけではなかった。 だが、結衣は、その一連の”祭り”に違和感を抱く。「あなたたちがやったことは、本当に何かを変えたの? それとも、また一つ、分かりやすい生贄を用意しただけ?」律は反論するが、結衣の問いは、律自身の過去の行動にも、静かに突き刺さっていた。 犯人を探すこと自体が、間違った問いだったのではないか――律は、その直感の正体を、まだ言葉にできないまま、次の一手を選ぼうとしている。 そして律は、気づいていない。自分がその一手を選ぶ基準そのものが、また新しい「結果」への急ぎ足になっていることに。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/08/30
  • 現在の作品減数の孤島 / The Blind Margin ―第二部―