あらすじ
乙女ゲーム『花冠の乙女』の悪役令嬢、リディア・ヴァレンシュタインに転生してしまった私。
ゲーム通りなら、第一王子レオンハルトの婚約者としてヒロインをいじめ、最後には断罪されて婚約破棄。その後は政変に巻き込まれ、悲惨な末路を迎える。
そんな未来は絶対にお断りですわ!
十二歳で前世の記憶を取り戻した私は、悪役令嬢らしい行動をすべて封印。
おかげで断罪ルートは無事回避できた。
ただし――。
婚約破棄だけは、予定通りお願いしたい。
だって私は王妃になんてなりたくありませんもの!
面倒な社交界も、政治も、王妃教育も全部放り出して、田舎の領地で鶏を育てたい。
毎朝卵を集めて、プリンを作って、庭でのんびり暮らす。
それが私の夢だった。
そのため私は三年間、レオンハルト殿下に嫌われる努力を続けてきた。
お茶会を断り。
安物の贈り物をし。
距離を取り。
そして迎えた、ゲーム本来の婚約破棄イベント。
「リディア・ヴァレンシュタイン。君との婚約を――」
来ましたわ!
これで自由です!
「――継続する」
……はい?
しかも私の嫌われ作戦は、なぜかすべて好意として受け取られていたらしい。
お茶会を断れば「私を気遣ってくれた」。
卵を贈れば「君の好きなものを私にも」。
鶏について一時間熱弁すれば「領地経営まで考えているのか」。
どうしてですの!?
私は婚約破棄されたいだけなのに!
「三年間も逃げ続けたんだ。もう逃がさない」
婚約破棄されたい悪役令嬢と、絶対に逃がす気のない第一王子。
今日もリディアは田舎の鶏小屋を夢見て、全力で嫌われようとする。
そして今日も――なぜか王子の好感度だけが上がっていく。