あらすじ
「重い女」になりたくなくて、私は彼から差し出された合鍵を断った。
付き合って半年。
穏やかで、まっすぐで、私を大切にしてくれる恋人・青山直人。
本当は嬉しかった。
彼の生活の中に、自分の居場所ができることが。
でも私は、笑って言ってしまった。
「え、重くない?」
過去の恋で「愛情が重い」と言われてから、私は誰かを好きになるほど、先に距離を取るようになった。
会いたくても言わない。
寂しくても平気なふりをする。
大事にされても、いつか失う日のことを考える。
だから、合鍵も受け取れなかった。
――その三日後。
私は、彼が大阪へ転勤することを、本人ではなく会社の後輩から知らされる。
しかも、あの合鍵には、私が知らなかった意味があった。
彼が差し出していたのは、ただの鍵ではない。
私との未来だった。
好きなのに、受け取れない。
寂しいのに、言えない。
失いたくないのに、自分から遠ざけてしまう。
そして大阪行きを目前にした彼との時間が、残りわずかになった時。
私は初めて、自分の「平気」という嘘と向き合うことになる。
愛されることが怖い三十歳の女性と、
傷つきながらも未来を差し出した恋人。
一度は拒んだ合鍵を、もう一度受け取ることはできるのか。
これは、
「重い女になりたくない」と本音を隠し続けた女性が、
大切な人を失う寸前で、初めて「寂しい」「会いたい」「好き」を伝えるまでの物語。