あらすじ
家業の醸造所へ廃業を告げに来た監査官トゥドルは、署名する指まで震えていた。品評席から外され「仕込み係」と呼ばれるミオアラは、そんな身体で何を監査するのかと、温め直した薄麦酒と麦粥を押しつけ、裂けた指を手当てし、乾いた寝床で眠らせる。三口しか飲めなかった彼が一杯を空け、六時間眠れるようになった時、読み直した帳面から支配人の不正が露見する。
ところがトゥドルが自らこの査察先を選んだ理由も、彼女だけに尋ねたかったことも、廃業撤回では終わらなかった。世話を仕事と思う男と、世話を監査続行のためと思う女。同じ石杯を挟んだ公開求婚が、職人全員を巻き込む、どうにも噛み合わない両片思いのお話。