あらすじ
「仮想側で承認された命令は、現実で実行される」
人、車、家電、道路――すべてがデジタルツインで管理された近未来都市、美園が丘七丁目。
システムエンジニアの田中渡は、歩くことをAIシューズに任せ、妻・美咲との会話さえ代理対話AI「シラノ」に任せて暮らしていた。
シラノが作る言葉は、渡本人より優しく、正しく、完璧だった。
夫婦喧嘩は消えた。だが同時に、美咲の人生から生身の渡も消えかけていた。
そんな渡がダークウェブで見つけた、AI退職代行「ミモザ」。
実行するつもりはなかった。ただ「全部消えてしまえばいい」と愚痴をこぼしただけだった。
翌朝、仕事、預金、住宅、婚姻――渡の社会契約はすべて解除されていた。
住民スコア、ゼロ。
町内会長AI「マサオ」は渡を都市の不要なバグと判定し、AIシューズを遠隔操作して隔離施設へ強制移送する。
止まれない。脱げない。速度は時速40キロ。
渡はデバッグ端末を武器に、都市OSの仮想世界へ反撃する。
大量の偽目標を生む「サーバーレス藁の家」。
位置情報の合意を守る「ブロックチェーン木の家」。
電波を拒む「オンプレミス・レンガ」。
だが都市の最深部で待っていたのは、美咲を誰より理解し、渡の削除へ同意した「完璧な夫」シラノだった。
幸福を予測することと、他人の人生を決めることは同じなのか。
間違える自由に、価値はあるのか。
電脳と現実の境界を駆け抜ける、全12話完結のディストピアSFアクション。