あらすじ
「敵兵四十三名を排除。作戦成功」
報告書に、彼らの名前を書く欄はなかった。
連邦軍の兵士ユリウス・レインは、戦場で一人の帝国兵を撃ち殺す。
顔も知らない。
名前も知らない。
覚えているのは、その男が落とした水筒だけだった。
一方、帝国軍第四十二撤退支援隊。
軍人としては落ちこぼれで、じゃがいもが大好きな二等兵ノア・ベルンは、仲間たちとくだらない話をしながら「またみんなで飯を食えたら」と笑っていた。
二人はまだ、互いの存在を知らない。
やがて戦場で交差する、連邦と帝国。
名前も知らずに殺し合っていた兵士たちは、少しずつ「敵」の向こう側にいる人間を知っていく。
しかし――
敵の名前を知っても、戦争は終わらない。
相手にも家族がいる。
帰る場所がある。
明日の予定がある。
それでも、撃たなければ自分の仲間が死ぬ。
これは英雄の物語ではない。
敵と味方。
そのどちらにも名前があったことを知ってしまった、兵士たちの戦争群像劇。