あらすじ
この世界の力は、ぜんぶ借り物だ。
雷を呼ぶのも、傷を癒すのも、剣が鉄を断つのも、〈源〉から力を借りているだけ。利息は年ごとに増え、返済は本人ではなく担保――畑、寿命、森――から静かに取られていく。だから誰も気づかない。村が痩せるのを「不作」と呼び、家が絶えるのを「呪い」と呼ぶ。
ユストは〈取り立て人〉だ。踏み倒している者のところへ歩いて行き、本名を呼んで告げる。
「ご返済の日です。お支払いは――一括で」
雷の男爵は三十年分の雷を館に落とされ、剣聖の剣は振り下ろす途中で持ち主の元へ返り、聖女の奇跡は祝福した民の白髪ごと本人に戻る。
監視役の騎士ヴェラは毎回、決闘を覚悟して、毎回、一言で終わるのを見る。
「……あなた、本当に何者?」
「取り立て人です。それ以外は、もう忘れられましたので」
三百年前の勇者が借りた〈大借り〉を、この国の誰が払っているのか。帳尻が合わなくなる日は、いつか。
淡々と回収して回る最強の取り立て人の、一話一件の取り立て譚。