あらすじ
俺には、少し変わった習慣がある。
眠ると、別の世界で目を覚ますのだ。
剣と魔法の世界で冒険者になったこともある。
宇宙船に乗って銀河を渡ったこともある。
学園で青春を送ったことも、怪異だらけの街で生き延びたこともある。
夢にしては長すぎて、鮮明すぎる。
そこで出会った人間の名前も、交わした会話も、失敗も、後悔も、目を覚ましたあとまで全部覚えている。
だから俺は、それを小説にした。
ファンタジー。
SF。
恋愛。
ミステリー。
ホラー。
現代ドラマ。
体験した世界が違うのだから、当然ジャンルも違う。
ただ、それだけだったはずなのに。
『またこいつランキングにいるんだけどw』
『ハイファ一位も宇宙SF一位も同じ作者ってどういうことだよ』
『恋愛まで書き始めたぞ』
『待て。このキャラ、別作品にもいなかったか?』
いつしか投稿サイトでは、俺の名前そのものが話題になっていた。
しかも読者たちは気づき始める。
本来なら何の関係もないはずの作品同士に、同じ地名が存在すること。
別の物語で語られた昔話が、他作品では歴史的事件として残っていること。
そして――死んだはずの登場人物が、まったく別ジャンルの物語に姿を見せていることに。
俺が「別々の世界」だと思っていたものは、本当に別世界なのか。
そもそも俺は、どうして眠るたびにそこで人生を送っている?
そんな疑問を抱き始めた頃。
今度は、小説の中にいるはずの人間たちの方が――俺を探し始めた。