あらすじ
「頭の弱い小娘に何ができる。そこで笑っていろ」
神殿騎士が村の井戸を埋めていた。止めに入った老人が転がされ、誰も動けない。
そこへ、干し草から小娘が一人起き上がった。名はアリ。十歳、痩せっぽち、髪も顔も煤だらけ。今朝はじめて洗濯物を干し切って、それが面白くてたまらないらしい。
アリは老人の前にしゃがんで、目を見た。
「わたしが返すよ」
そして自分で井戸の前へ歩いた。隊長が笑い、兵も笑った。——その侮りの分だけ封印が緩む。
二十本の剣が振り下ろされた瞬間、小娘は十一歳になり、光の粒をまとって、洗濯物を干すように二十人を空へ吊るした。老人は自分の足で立ち、湧いた水でアリの顔を洗った。
「一つしか溜まらなかった。ごめんね、そんなに舐めてくれなかったから」
彼女は元・熾天使アリエラ。位階のいちばん上にいた者が、女神ティスベに力も姿も封じられた。
侮られた分だけ緩み、緩んだ分だけ姿が戻る。一つで十一歳と光の粒。十で二十歳、大陸も消える。
でも、権能でなく自分の手でやることって面白い! だから今日も何かを覚えに行く。
——それが、どうしようもなくバカっぽく見えちゃうけど。