あらすじ
「一撃の火力がゼロ? 撃破数もゼロ?
――ええ、その評価で間違いございませんわ」
魔力の最大出力こそが正義とされる王国で、ノクティス公爵家の令嬢エルセリアは『無能』の烙印を押された。
婚約者であるアルヴィス王子からは一方的に婚約破棄を突きつけられ、実の父親からも見捨てられて王都を追放される。
だが、誰も知らなかった。
彼女の真価は、一撃の威力を競う競技戦などではなく――「絶対に死なない怪物」を殺し切るための【極限の弱体調律(デバフ)】にこそあることを。
秒単位で重なる多重デバフ。
完璧に計算されたヘイト管理とMP残量計算。
どれほど巨大な魔力を誇ろうと、一度彼女のワルツに巻き込まれたターゲットは、1ミリの再生すら許されずジワジワと死へと追い詰められていく。
やがて、王都を襲う八百年越しの国家級厄災――超再生能力を持つ漆黒の巨獣《ヴォルグレイド》。
王国の全戦力が蹂躙され、絶望に包まれる中、銀の懐中時計をパチンと鳴らしたエルセリアが静かに戦場へと降り立つ。
「討伐予定時間、72時間20分。――持久戦と参りましょう」
過ちを犯した王家。娘を捨てた父親。そして、この国が隠し続けてきた八年百分の罪。
家系の秘術《罪量刻印》を刻み込み、理屈の通った「裁き」のタクトが今、振るわれる。
「効くべくして、効いておりますので。――これにて、終曲(フィナーレ)ですわ」