あらすじ
拾った竜は、生きるために誰かの命を吸わなければならなかった。
貧乏冒険者アルが町へ帰る途中で見つけたのは、傷だらけで死にかけた小さな竜。毛玉のように丸くて可愛いくせに、「我は偉大なる竜だ」とやたら偉そう。しかもその竜は、生き物から命を吸い取る力を持っていた。
自分の飯にも困る暮らしだ。それでも見捨てれば寝覚めが悪い。アルは竜を宿へ連れ帰り、傷を手当てし、乏しい食事を分け与える。
ところがその夜、眠っていた竜は無意識にアルの命を吸ってしまう。このままそばにいれば、アルを殺してしまう。そう思った竜は、ひとり宿を去る。
けれどアルは、自分から離れ、死を選ぼうとする竜を、もう一度拾いに行く。
「死なない程度に、俺から吸える?」
「できぬ」
「即答かよ~」
死にたくないのに見捨てられない貧乏冒険者と、アルを殺したくない命を吸う竜。
帰すまでの、ほんのしばらくの間だけ。
そう始まった二人の暮らしは、食卓を囲み、物語を読み、帰りを待つうちに、少しずつかけがえのないものへ変わっていく。
けれど、ようやく形になり始めた二人の暮らしは、穏やかなままではいられない。やがてコロの力を狙う者たちも現れ、二人の穏やかな暮らしは少しずつ揺らぎ始める。
アルと竜の間でも、本人たちの知らないところで、命の流れそのものが変わり始めていた。
これは、互いを危険にさらしてしまう二人が、それでも少しずつ互いの「帰る場所」になっていく物語。
【アル】
焦げ茶色の髪と、灰色がかった苔色の瞳を持つ青年。前髪の一房がいつもはねている。首にはくすんだ赤いスカーフを巻き、使い込まれて黒ずんだ革装備を身につけている。装備を外すと、首や肩の線は細い。
【コロ】
明るいオレンジ色の毛に覆われた、まんまるな幼竜。小さな角と短い翼を持ち、仕草は犬に近い。角の根元には金木犀に似た小花が咲き、お尻の近くには花形の毛模様がある。甘く暖かな花の香りをまとっている。