あらすじ

まだ独身だった頃、私は駅から十五分ほど歩いて工場へ通っていた。 通勤途中でよく見かける、隣の会社に勤める女性。互いに顔は知っていても、挨拶を交わしたことさえない間柄だった。 珍しく雪が強く降った朝、傘を持たない私に、彼女は何も求めず傘を差しかけてくれた。 交わした言葉は、ほんのわずか。その後、二人の間に何かが始まることもなかった。 それでも長い年月を経た今も、あの日の親切だけは忘れていない。 若い頃に一度だけ訪れた、名前も知らない人との静かな十五分を描く青春短編。

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カクヨム
カクヨム2026/08/30
  • 現在の作品雪の日の傘