あらすじ
彼女の名前は雨宮ジュリア。地方に住む中学生。年齢の割には大人びた容姿を持ち、地方では有名な美人で愛嬌もあり、男女問わず人気があった。成績も悪くなく、テストの点数が悪い時は周りに報告して笑いを取るような憎めない存在だった。スポーツでは陸上部に所属して、大会で常に上位に入るほどの実力があった。そんな彼女にも苦手なものが1つあった。それが道徳だ。
6限目の道徳の時間、早く部活に行きたいのに、それを邪魔するように、彼女にとってはつまらない時間がゆっくりと進んでいった。ただでさえ苦手なのに真夏のこの時期。しかもエアコンの調子が悪く、窓辺の席のジュリアには足かせを何重にもつけられているように感じた。今日の道徳は交通事故についてで、中学生になって今更と感じるのはクラス全員の総意だった。
そんな意見は無視され、ゆっくりと嫌がらせのように授業を進む。時折、担任が生徒に対し、実際の事例を題材に改善点などについて意見を求めた。同じような事故で同じ様な返答。ルーティーンをこなす作業が繰り返された。授業も終盤になり、1つの事故が紹介された。
住宅街で1台の車が脇見運転をしていた。その時猫が飛び出し、それを助けようと女の子が飛び込んできて、女の子とぶつかり、女の子は亡くなった。
今までのように担任が生徒を指名して意見を聞いていた。
概ね住宅街で、いつ人が来るか分からない状況で、脇見運転をしていた運転手が悪く、運転に集中するべきだったと言う趣旨の答えが繰り返されていた。ただジュリアの意見は少し違った。
『脇見運転も悪いけど、猫なんか助けようとした女の子も悪くない?同じ命を奪うにしても、SNSやメディアの叩き方が違う。自分の不満をぶつける様に公開処刑が始まる』
暑い中、ぼんやりと自分の思いを形にしながら、他の生徒の意見を聞いていく。
普段のジュリアなら、こんなことを言ったら、クラスからの印象が悪くなること位すぐにわかった。ここは周りに合わせて同じように伝えるべきだ、、べきだった。だが、急に名前を呼ばれ動揺して、頭の中の言葉を口に出してしまった。
今までの静けさが嘘のようにーー
「なんて言った?」
「誰?」
「嘘でしょう?」
「ちょっとひどくない?」
と言う発言の確認と非難の拡散。真夏にも関わらず冷たく感じる視線が、クラス中から浴びせられた。
空気と温度が一気に変わった。いつもなら自分で茶化したりしていたが、頭が真っ白になり、口元も震え、喉は誰かに締めつけられたように声が出ない。