あらすじ
台風が接近する夜、古い木造アパートでふすまを挟み正座する二人。外では風速30メートルを超える荒天が街を荒らし立てるが、主人公の胸中にはそれ以上の激しい嵐が吹き荒れていた。
真の「怪異」とは猛烈な低気圧ではなく、目の前の相手に触れてしまいそうになる理性との戦い、そして相手の一言で世界が揺らぐ「恋」そのものだった。
暴風域の中で静寂を保ったまま夜が明ける。翌朝、街には台風の爪痕が残り、二人は何事もなかったかのように駅へ歩き出す。しかし主人公の心には、晴れ渡った空の下でも消えない恋という暴風の傷痕が深く刻まれていた。