あらすじ
「ハヤクチ」――それが僕、早川邦人の不名誉なあだ名だ。
大好きな漫画『パリコレ』について熱く語った中学時代の発表会。
その「早口」を笑われたことをきっかけに、僕は人前で話すことをやめた。
高校でも目立たず、ひっそりと過ごす。
それが僕の選んだ生き方だった。
そんなある日の放課後。
西日の差し込む教室で、クラスの人気者・ハルカが僕に声をかけてきた。
「それ、もしかしてパリコレ?」
彼女もまた、誰にも言えない『パリコレ』の原作ファンだった。
昼間は、地味なオタクとクラスの人気者。
けれど、夜になればLINEで作品について語り合う同志。
好きなものについて話すと、僕はどうしても早口になる。
それを彼女は笑わなかった。
「語りたい相手がいる時ほど、早口になる気がする」
僕のコンプレックスを「情熱」と呼んでくれた彼女との時間は、少しずつ僕を変えていく。
――けれど、そんな秘密の関係は、一本のメッセージによって崩れ始める。
ハルカの誤送信。
それをきっかけに、二人の関係に周囲の視線が集まり始める。
彼女を守るために、僕が選んだのは――再び「ハヤクチ」と笑われることだった。
「俺みたいなのと仲良くしてるってだけで、笑われるから」
教室では交わらない二人。
スマホの中では、誰よりも近い二人。
すれ違う二人の想いは、やがて文化祭のある企画へと繋がっていく。
これは、自分の「好き」を隠して生きてきた少年が、誰かと語り合うことの楽しさを取り戻していく物語。