あらすじ
十一月一日、驚くほど晴れた空の下。
電車に乗れるかどうかさえ不安だった僕は、友人・重夫に支えられながら上野へ向かう。
待ち合わせは夜八時なのに、重夫は昼過ぎには到着していて、二人でカラオケに入り、声が枯れるまで叫んだ。
やがて現れたのは、手紙をくれた看護学生の千波さんと里美さん。
電話では盛り上がっていたのに、実際に会うとぎこちなく、
それでも四人でアメ横を歩き、両国へ移動し、朝まで歌い続けた。
夜明け前、写ルンですを一本ずつ持って上野動物園へ。
動物、落ち葉、互いの笑顔――若さの無様さも純粋さも、全部フィルムに焼き付けた。
居酒屋で食事を済ませ、あっさりと別れた帰り道。
言葉にならない想いだけが胸に残り、
駅のホームでふと気づく。
「今なら電車に乗れる。」
あの日の光景は、遠い日の灯りのように、今も静かに揺れている。