あらすじ
携帯電話がまだ高価で、ワン切りが小さな知恵として流行していた頃。
看護学生たちは、国家試験に向けて寮の食堂に集まり、滴下数や希釈の計算を必死に学んでいた。
その中心にいたのが、級長・鳴瀬瑞希。
「寮生七人、誰一人落とさない」――そんな静かな決意を胸に、彼女は仲間を率いていた。
語り手である“僕”は、千波や里美の勉強を手伝ううちに、いつしか寮に泊まり込み、
瑞希たちと共に冬を過ごすようになる。
割り算の「ノの中/外」でつまずく菅井祥子、
可能圏へと成績を伸ばす千波、
ラ・フランスと缶詰が並ぶ素朴なクリスマス。
そして瑞希から贈られた、父の畑で採れたズッキーニ。
時代の不便さと、若さのぎこちなさ。
そのどちらもが、確かに温かかった――