あらすじ

定年退職した六十五歳の私に残されたのは、予定のないスケジュール帳だけだった。娘の恵子との会話に、覚えのない食い違いが増えていく。「昨日もその話したよね?」――それは物忘れなのか、それとも何かが少しずつ違っているのか。 不安を思い描くほど、その不安がそのまま現実になっていくような感覚。頭の片隅にちらつくのは、いつも認知症だった母の顔――のはずだった。 亡き母の遺品から出てきた一冊のレシピノート。それは、かつて自分が「突き放された」と思っていた記憶の意味を、静かに書き換えていく。教えることをやめ、見守ることを選んだ私。恵子との関係は、確かに良くなったように見えた。 けれど眠りに落ちる直前、いつものように思い描くあの光景。そこに映る顔は、本当に母のものだったのだろうか。

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エブリスタ2026/08/29
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