あらすじ
【登場人物】
■久美
段取りを立て、物事を着実に進める女性。予定が狂うことを嫌い、自分中心になりがちな一面もある。将煕とは二十年来の親友。
■将煕
素朴で自由奔放な男性。普段は無計画だが、問題が起きるほど冷静になり、土壇場で抜群の問題解決能力を発揮する。久美には長年話していない家族の記憶がある。
【あらすじ】
八月の満月の夜。
久美は、取り壊しを目前にした将煕の実家へ呼び出される。
将煕の手にあるのは一本のシャベル。
そして庭の奥には、名前の刻まれていない小さな墓標が立っていた。
「うちでは、月の墓って呼んでた」
将煕が突然語り始めたのは、久美が一度も聞いたことのない家族の思い出だった。
幼いころ、将煕の家族は新月になるたび「死んだ月」のために大切なものを庭へ埋め、満月になると掘り返していたという。
その思い出の中には、十歳で亡くなった妹・月乃がいた。
二十年以上の親友なのに、久美は月乃の存在すら知らない。
ところが墓標の下から掘り出した古い瓶には、幼い月乃が描いた一枚の絵が残されていた。
そこに描かれていたのは家族四人――そして、いるはずのない「久美ちゃん」。
なぜ私は、月乃のことを忘れているのか。
満月の下、埋められていた記憶が少しずつ掘り返されていく。