あらすじ
異世界で目を覚ました俺は、吸血鬼になっていた。
しかも真祖でも、高位のヴァンパイアでもない。
日光を浴びれば焼け、血を飲まなければ衰弱する、最弱種《レッサー・ヴァンパイア》。
生きるためには、人間の血が必要だった。
けれど、前世が日本人だった俺には、人を襲って血を啜るなんてどうしてもできない。
だったら――。
「その血、売ってくれないか?」
貧しい辺境村の少女から、小さな杯一杯の血を銀貨で買った。
それがすべての始まりだった。
血を提供してもらう代わりに、夜は俺が村を守る。
魔物を狩り、盗賊を追い払い、夜道を護衛する。
昼間、太陽の下を歩けない俺を守ってくれるのは人間たち。
夜になれば、今度は俺が彼らを守る。
さらに、人間の血には、その者が生きてきた痕跡がわずかに宿っていた。
狩人の血なら鋭い嗅覚を。
鍛冶師の血なら熱への耐性を。
騎士の血なら強靱な肉体を。
魔術師の血なら魔力への適性を。
血を奪うより、人間と繋がるほど俺は強くなる。
一人の少女から始まった奇妙な取引は、やがて村へ、町へ、そして人間と夜の種族が共に暮らす土地へと広がっていく。
これは、人間を家畜にしなかった吸血鬼が――
いつしか《夜の王》と呼ばれるまでの物語。