あらすじ
「ねえ、灯(あかり)。十三段目って知ってる?」
親友の何気ない一言から、すべては始まった。
宵ヶ丘(よいがおか)市の駅前にある、十二段の歩道橋。
午前零時ちょうどに一人で上ると、存在しないはずの十三段目が現れる。
そこで背後から名前を呼ばれても、決して振り返ってはいけない。
もし振り返れば、その人は誰からも忘れられ――最初から存在しなかったことになる。
そんなの、よくある都市伝説だ。
「でも、それって変じゃない?全員が忘れるなら、誰がこの噂を広めたの?」
そう笑っていた高校二年生の雨崎灯(あめざき あかり)は、親友の白雲紬(しらくも つむぎ)とともに、軽い気持ちで噂を確かめに行く。
午前零時。
十二段目を上った灯の足が踏んだのは、そこにあるはずのない十三段目だった。
そして背後から、知らない女の声がする。
「――雨崎さん」
その夜を境に、灯の日常には奇妙な噂が入り込み始める。
鏡越しにしか見えない女子生徒。
存在しない四階に止まるエレベーター。
午前二時に、死者の名前を読み上げる校内放送。
最終電車のあとにだけ現れる、存在しないホーム。
調べていくうちに、灯は一つの事実に気づく。
ネットに書かれた怪談と、古い記録に残された怪談では――「ルール」が違っている。
噂は変わる。
語る人が増えるたびに、少しずつ形を変えていく。
そしてどうやら、怪異の方も。
これは、都市伝説の多い街・宵ヶ丘で、怪異に「顔を覚えられてしまった」少女たちが、噂の向こう側に隠された真実を辿っていく物語。
ただし、一つだけ覚えておいてほしい。
もしあなたが、この物語で知った怪談を誰かに話すのなら――
その噂が、明日も同じルールだとは限らない。