あらすじ
真山早苗、四十一歳。商店街のクリーニング店に、二十年。何をやっても、あと一歩で報われなかった人生を、「そういう星回り」と呑み込んできた。
ある夜、部屋に、配達員の制服を着た女が立っていた。
「本日、あなたの人生を、お届けに参りました」
女は事務的に告げる。
一、あなたに届くはずだった人生が、長らく、他所に配達されておりました。 二、つきましては、順次、お届けにあがります。受領は拒否できません。 三、配達は一度につき一件。次回の配達日は事前に通知いたします。 四、なお——お一件だけ、お受け取りにならないことができます。
配達予定、四十一件。彼女の年齢と、同じ数。
小学五年で奪われた、伴奏の席。二十年前に横取りされた、就職の内定。三十年前、他人の名前で入選した、読書感想文。
だが、届いた荷物には、毒がある。「これがあれば違った四十一年」と、彼女は毎回、向き合うことになる。
そして毎回、同じ反転が起こる。欠けたまま生きた歳月が、その荷物の正しい使い方を、既に知っている。
伴奏の席は、鍵盤の前ではなく、隣にあった。回す人が、いなかったからだ。四十一年、順番の来ない籤を引き続けた彼女だけが、その席の座り方を、隅から隅まで知っていた。
遅れて届いた荷物は、遅れた分だけ、正しく使われる。
すべてを失っていく男の物語(第一作)の、鏡。すべてを受け取り損ねてきた女の、これは、いちばん豊かな一年半の記録。
全三十八話、完結済み。本作単体で、完全にお読みいただけます。