あらすじ
「君との婚約を破棄させてもらう」
実家の伯爵家から厄介払いされ、王都を追放された令嬢エレノア。
持たされたのはトランク一つと、祖母が遺した辺境の宿屋『夕星亭(ゆうづつてい)』の鍵だけだった。
すべてを失ったエレノアは、埃まみれの宿を自らの手で磨き上げ、女主人として生きていくことを決意する。
しかし、その宿に訪れる客たちは、みな心に深い傷と「誰かを待つ祈り」を抱えていた。
亡き妻を待つ老人、帰らぬ娘を待つ母親、そして――戦場で友を失い、自らを罰し続ける最強の辺境騎士・レオン。
エレノアには、彼らが待つ相手の「気配」と「匂い」を感じ取る不思議な力があった。
彼女の淹れる温かいハーブティーと絶品の料理は、凍りついた旅人たちの心を少しずつ溶かし、過去への執着を「明日への希望」へと変えていく。
「君の淹れる茶は、温かい。……この宿に来ると、息を吹き返す気がする」
不器用で無愛想な騎士レオンとの間に芽生える、穏やかで確かな絆。
過去に囚われていた二人が、夕暮れの一番星に導かれ、温かい食卓とともに生きていく感涙のファンタジーストーリー。