あらすじ

大学生の末広佳奈は、ホラー映画が好きだった。 恐怖が好きなのではない。恐怖の順番が好きだった。溜め、間、見せ、切断、余韻。どこで息を止め、どこで切るかを観ていると、怖さより先に編集が見えた。深夜のコンビニバイトが終わったあと、安いレンタルの旧作を一人で観るのが、佳奈の帰宅儀礼だった。 その日も同じはずだった。 帰り道、珍しくまだ電気のついている古本屋があった。雨に濡れた棚の端に、手書きの紙が一枚、テープで止められている。所々滲んで、文字が欠けていた。 【映画 ホラー上映 未経験者歓迎 時給千八百五十円〜】 時給だけは、滲んでいなかった。コンビニより高い。 佳奈は、自分でも意外に思うほど早く電話をかけていた。呼び出し音は二回で止まった。 「……あの、求人を見て」 沈黙があった。受話器の向こうは、人が出ているというより、穴が開いている感じだった。 「名前を、いつもと同じ順番で言って」 生気のない声だった。女の声であるが、普通の女性よりも低い。吸っている煙草の匂いまで聞こえるような声だった。

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小説を読もう2026/09/19
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