あらすじ
魔王は倒された。
長く続いた戦争も終わった。
――それでも、英雄たちは帰ってこない。
狂化から戻れない戦士。
死者の声に苦しむ聖騎士。
戦うことしか知らず、平和の中で生き方を失った者たち。
世界を救ったはずの彼らは、戦場から帰ったあとも、人生には帰れずにいた。
前世でハローワークの就職支援員だったノアは、二十六歳で死に、女神から異世界の窮状を聞かされる。
「戦争から帰ってきた人たちが、なかなか社会に戻れないんです」
そしてノアは、帰還兵たちの治療と社会復帰を担う《帰還兵魔術療院》へ転生する。
与えられたチートスキルは、人の心に触れる四つの力。
けれど、ノアが本当に頼りにするのは前世で身につけたものだった。
人の話を聞くこと。
何ができるかを一緒に考えること。
そして、本人がもう一度自分の足で歩き出すまで付き合うこと。
相手は、魔王軍と戦った英雄たち。
狂戦士が暴れれば死ぬかもしれない。
聖騎士の心には、戦場で殺した者たちの声が残っている。
勇者でさえ、平和な世界では生き方を見失っている。
それでもノアは、必要なら彼らのところへ行く。
前世では、最後までやりきれなかった仕事だから。
戦争から帰ってきた人間を、今度こそ人生まで帰す。
これは、世界を救った英雄たちの「その後」を支える、一人の治療師の物語。