あらすじ
「毒味役ごときが、私の王杯に口をつけるな」
戴冠式の大広間。婚約者である王太子ジークベルトに、満座の前でそう言い放たれた毒味役令嬢エルフリーデ。代々王家の毒味役を務めるヴァイセンフェルス家の娘である彼女は、「古臭い因習」として役目を奪われ、追放されようとしていた。
しかし——彼女は気づいてしまう。王太子の掲げる王杯から立ち上る、微かな苦扁桃の匂いに。それは即死性の神経毒、シアン化合物。寵姫アマーリエが仕組んだ、暗殺の罠だった。
「その杯、私が飲み干して差し上げますわ」
前世は現代日本の臨床試験施設で、あらゆる毒物に耐性を極めた研究者『毒が効かない女』。その魂を継ぎ、【状態異常無効】のギフトを得たエルフリーデにとって、猛毒など効きはしない。満座の前で毒杯を飲み干し、指一本震わせない彼女は、氷のように冷たく微笑む。
「毒味役を『不要』と仰ったあなたは——たった今、私に命を救われたのですわ」
侮られ、道具として扱われてきた令嬢の、鮮やかな反撃。そして母が命を懸けて守った役目の意味を証明する物語。
因習を終わらせ、辺境で新たな人生を歩み始めた彼女のもとに、再び毒殺事件の影が忍び寄る——。氷の将軍コンラートと共に、毒が効かない令嬢の第二の人生が幕を開ける!