あらすじ
釜野地区の人口は、父が死ぬまで27人だった。
父が死んで、26人になった。
東京で妻と娘と暮らす会社員、佐久間直人、38歳。
父の葬儀で戻った故郷に残されていたのは、古い家と、売れるかどうかも分からない田畑や山だった。
長男だから、守らなければならない。
そう思っていた直人に、父が残した映像は告げる。
「この村を、残そうとするな」
父のパソコンには、28本の映像があった。
映っていたのは、子どものころから知っている村の人たち。
山できのこを採るキヨばあ。
友人の声をもう一度聞きたい老人。
母校の取り壊しを受け入れた、最後の卒業生。
映像を届けに訪ねるうちに、直人は知っていく。
残したいという気持ちだけでは、残せないものがあることを。
それでも、なくなる前にできることはないだろうか。
消えていく故郷と、そこに暮らす人たちを描く物語。