あらすじ
織物工房の下働きが三人、同じ夜に消えた。身寄りがないので届も出ず、噂になったのはひと月後。切り刻まれただの埋められただの、誰も見ていないのでいくらでも言えた。
三日前、十四歳のコリンナが衛兵詰所へ出向いて、自分がやったと言った。遺体は一つも出ていない。
伯爵令嬢ミレーユは加護を授からなかった。そのかわり精霊が見えるが、この子たちが覚えているのは猫のあくびの回数や、干し紐が何本減ったかばかりで、何の役にも立たない。八つの年に一度だけ父へ打ち明けて、嘘つきと言われてから、誰にも言っていない。
侍女の制止を振り切って尋問室に入ったミレーユは、事件のことを何も訊かなかった。前世でクレーム対応を十二年やって身についたのは、話を最後まで聞くことだけだった。
誰も死んでいない。死んだことにしなければ、追われる子がいた。