あらすじ
「顔って、描けばいいんですよ」
無料カウンセリングの美人カウンセラー・霧子さんは、笑うと右頬にえくぼができる。
私、佐藤美羽、二十九歳。婚約破棄、左遷、母の入院──人生の在庫を数えるのが怖くなる三十路手前の秋、その美容外科の扉を押した。
最初は「少し、若く」程度の希望だった。
気づけば、支払額は消費者金融三社からの借入額で、施術は週イチ。鏡の中の私は、たしかに──ずっと、綺麗になっていた。
ただ。
午前3時、診察室で見てはいけないものを見た。
カルテに走る筆記。壁に吊るされた何枚もの顔の写真。そして、施術グローブと注射器を並べ、歌うように描いている──霧子さんの背中。
「美人はね、塗るんじゃありません。描くんです」
気づいてしまった私は、もう「客」では済まされない。
皮を借りた女の、現代怪談。