あらすじ
探偵・榊冬馬のもとに持ち込まれたのは、病院へ搬送されたまま消息を絶った夫を探してほしいという依頼だった。
だが調査を始めた直後、市内各地で原因不明の感染症が発生する。
交通網は停止。
道路は封鎖。
街は外界から切り離された。
そんな中、冬馬のもとへ一本の電話が入る。
「探偵なら、俺を見つけてみろ。この街が死ぬ前にな」
犯人は、感染を拡大させる怪人《CARRIER》。
しかし彼の目的は、ただ人を殺すことではなかった。
感染症への恐怖。
流言。
買い占め。
差別。
暴力。
極限状態に置かれた人間たちが、どこまで理性を保ち、どこで他者を切り捨てるのか。
封鎖された街そのものが、巨大な実験場にされていた。
一方、事件直前から感染症研究者・真鍋恭介が姿を消していた。
世間ではテロの首謀者として疑われる真鍋。
だが冬馬は、その行動に違和感を覚える。
「犯人なら、なぜ自分の研究を止めるためのデータを持って逃げる?」
調査の末に判明するのは、真鍋もまた組織に騙されていたという事実。
人を救うために作った研究成果が、知らぬ間に都市を壊す兵器へと変えられていた。
冬馬が追うものは二つ。
事件を起こしたCARRIER。
そして、街を救う唯一の手掛かりを持つ真鍋。
だがHELIXもまた二人を追っている。
犯人を追えば科学者を失う。
科学者を守れば街が危険に晒される。
CARRIERは冬馬へ何度も選択を迫る。
それでも冬馬は答える。
「どちらかを捨てる前提で話すな」
感染より速く広がる恐怖の中で、
一人の探偵が痕跡を追う。
怪人との心理戦。
封鎖都市での追跡劇。
そして、街そのものを使ったHELIXの実験。
人間は恐怖の中で、本当に自分だけを選ぶのか。
その答えを巡り、
榊冬馬は再び走り出す。
――恐怖より速く、真実へ。