あらすじ
目を覚ますと、俺は石の部屋になっていた。
手もない。足もない。声も出ない。
動くことさえできない。
どうやら俺は、人間ではなく――迷宮に転生してしまったらしい。
最初にできたのは、自分の壁や床を感じることだけ。
少しずつ自分の身体を調べ、岩を動かし、領域を広げていくうちに、俺は外の世界へとつながっていく。
やがて迷宮へ迷い込んできた、一人の少女。
彼女との出会いをきっかけに、止まっていた俺の世界は動き始めた。
人間、獣人、ドワーフ、エルフ。
行き場を失った者、助けを求める者、俺を調べに来る者。
一人、また一人と人が集まり、誰もいなかった迷宮の周囲には、いつしか小さな集落が生まれていく。
俺はただ、目の前の誰かを見捨てられなかっただけだった。
だが、普通の迷宮は人を助けたりしない。
生命を誘い、喰らい、成長するもの。
人と共に生きようとする俺は、この世界にとってあまりにも異質な存在だった。
そして地下深くへと領域を伸ばしたとき、俺は初めて知ることになる。
この世界には――俺以外の迷宮も存在する。
人と迷宮。
共生と捕食。
地下に眠る謎と、失われた歴史。
これは、人間として死んだ俺が迷宮として生まれ変わり、自分が何者なのかを探しながら、仲間たちと新しい居場所を作っていく物語。