あらすじ
「兵糧、あと九日分ありません」
「九日分あるのか」
「ありません、と申し上げました」
北部方面軍・第七兵站課、課長代理ネル・オルセン、十七歳。課員は彼女ひとり。
彼女の仕事は、数を数えること。兵の数、日数、距離、馬の飼葉、塩、そして靴。前線が今日食べているものは、十八日前に彼女が決めた結果だった。
ある日、新任の参謀長は言った。「誰にでもできる仕事だ」と。第七兵站課は廃止され、後任は置かれなかった。引き継ぎも不要とされた。
ネルは頭を下げて、帳簿を棚にきれいに並べて、出ていった。
――七日後、北部方面軍は飢えた。
これは、何もしなかった少女の話です。