あらすじ
デールラントの侯爵令嬢、ヒルディア・ヴォン・ヴィンガルド=メイベルは、フィアンセである第二王子と、友人だと思っていた伯爵令嬢の裏切りと策略によってすべてを失い、王都から追放されたうえ、王子の放った刺客に襲われ絶体絶命の危機に陥る。
そんな彼女を助けたのは、異国から流れて来たという旅の剣士、キトネ・スイガ(鬼刀禰錐牙)だった。
ヒルディアに怪我の手当てを施しながら、その身の上語りを聴いたスイガは、同情から彼女の先行きについては己が責任を負うと申し出る。
しかし、その言葉をプロポーズと勘違いしたヒルディアは、誰もが見限った己を唯一救って好意まで向けてくれている(と思い込んでいる)スイガからの告白を受けることにする。
それから五年後、見知らぬ山中で意識を取り戻したヒルディアは、自分の足元に転がる巨大な熊の躯と、右手に血に塗れた刀を持っているのに気付いて混乱する。
どういうわけか己の剣の師になったというスイガから、熊と戦う最中に頭を打ったことで記憶が飛んだようだと告げられる。
ヒルディアは、彼とともに熊退治を依頼されたという村を後にし、ふたりで暮らす山小屋へ帰る道すがら、この五年間に起こった出来事を聞かされる。
話を聞くうち、何故己がスイガの嫁ではなく弟子になったのかを思い出し、その後の過酷を極めた修行の日々の記憶も取り戻したヒルディアは、心から信頼し敬愛する師との生活に、あらためて歓びを感じ、こんな日々がこれからも続いていくことを望む。
しかしその直後、ふたりを訪ねてきた三人の男たちからある頼みを受けたことで、師弟の平穏な日々は終わりを迎えるのだった。
これは、勘違いとすれ違いを繰り返す師弟が、王国を覆す動乱の渦中に身を投じ、やがて革命を起こすまでの物語。