あらすじ
子供の頃、俺は錬金術師になりたかった。
鉛を金に変える賢者の石。
物質を自在に変える錬金術。
そんなものが現実には存在しないと知っても、憧れだけは捨てられなかった。
だから俺は化学を学び、高校の理科教師になった。
――まさか三十五歳になって、本物の錬金術と出会うとは思わなかったが。
異世界の古代錬金術工房へ迷い込んだ俺は、そこで二つの石を発見する。
右手に宿ったのは、物質を解析し、精製し、最適な形へ再構成する《賢者の石》。
そして左手に宿ったのは、廃材、毒物、失敗作――誰もが価値なしと捨てるものから、新たな可能性を引き出す《愚者の石》。
濁った水は飲み水へ。
粗悪な鉱石は高純度の金属へ。
毒草は薬へ。
壊れた魔道具は、誰も見たことのない新素材へ。
王国の錬金術師が何日かけてもできないことを、元理科教師は平然とやってのける。
「いや、不純物を分けただけなんだけど……」
本人の望みは、本物の錬金術を好きなだけ研究すること。
けれど一つの村を救った錬金術は、やがて街を、産業を、王国を変えていく。
正解を導く《賢者の石》。
失敗から新しい答えを生む《愚者の石》。
二つの石と化学知識を手にした元教師が、異世界の常識を錬成し直す――錬金術×生産無双ファンタジー。