あらすじ
憂内(うれうち)さんは恐ろしい程の完璧主義者で、何を書いても納得が行かずに辞めてしまう。頓挫した作品は数知れず。完成させてもすぐに非公開にし、引き出しにしまってあるプロット帳は百冊を超えている。
理想は高いが自己は低い。自分がいかに恵まれているだけの二番煎じの凡人かを噛み締め、何かに追い詰められながら、ノイズ混じりのラジオのようにボソボソ話し出す。「今次(いまつぎ)さん、今次さん……」まるでコックリさんを呼んでいるような物々しい雰囲気の憂内さんの前に一人、ふらりと現れた。
「こんばんは。憂内さん」彼は今次さんという、憂内さんの唯一の話し相手。時には大正浪漫のようにノスタルジックな関係に、時にはインモラルで背徳的に、そうして、現実から逃げるように今日も怠惰に過ごしている。