あらすじ
昭和六十年、東京。三好は貿易会社の経理係を装う非公式の工作員。だが彼には誰にも明かせないもう一つの顔がある。幼い頃から背負う、意味不明な入れ墨だ。母はある日忽然と姿を消し、三好は「自分を守るために消えたのだ」という物語にすがりながら、ずっとその行方を捜し続けている。
喫茶店で働く娘・翠は、そんな三好の孤独な影に惹かれ、母捜しを手伝い始める。祖父の遺品から見つけた手がかりが、二人を思わぬ場所へと導いていく。だがその純粋な善意が、やがて国家を揺るがしかねない、ある巨大な秘密に触れてしまうことになる。
母の正体、背中の入れ墨の本当の意味、そして翠を待ち受ける危険——すべてが明らかになったとき、三好はこれまで信じてきたものが根底から覆される。そして物語の核心には、誰も予想しないどんでん返しが用意されている。
すべてを失った男が最後に見出すのは、損得勘定のない、ただ一人の人間の温もりだった。