あらすじ
「戦場で必要なのは、失敗を利用する魔術師じゃない」
他人が発動に失敗した魔法を保存し、再現できる固有能力【失敗保存《ミス・ストック》】。
王宮魔術師レイル・アーヴェントはその能力を持ちながらも、「失敗魔法しか使えない無能」と評価され、戦時編成を理由に魔術師団を追われることになった。
実家へ帰る途中、辺境都市リベルへ立ち寄ったレイルは、偶然起きた事故で一つの失敗魔法を使う。
三百メートル転移するはずが、たった三歩しか移動できなかった【三歩転移】。
誰もが役立たずだと思っていたその魔法で、レイルは一人の子供を救った。
「……でも今、役に立ちましたよね」
その言葉をきっかけに、レイルは気づき始める。
三秒後に爆発する火球なら、罠にできる。
真横へ飛ぶ氷槍なら、敵の死角を攻撃できる。
自分まで吹き飛ばす暴風なら、攻撃と離脱を同時にできる。
――失敗魔法は、成功魔法の劣化版ではない。
期待したものとは違う、別の使い道を持った魔法なのだ。
やがて魔獣の群れがリベルを襲撃。
誰にも必要とされなかった魔術師は、誰も使おうとしなかった失敗魔法を手に、町を守るため戦場へ向かう。
これは、他人が捨てた「失敗」の中から、誰も気づかなかった価値を拾い上げていく魔術師の物語。