あらすじ
「君といると、息が詰まる」
そう言われて婚約を破棄され、三年ぶりに実家へ戻ったクラリス。
父には怒られる。
母は悲しむ。
兄には呆れられる。
そう覚悟して、玄関で頭を下げたのに――。
「おかえりなさい……! よかった、本当によかった……!」
「遅えよ、馬鹿! なぜ、もっと早く帰ってこなかった……!」
母も兄も、使用人たちまで泣いていた。
好物の林檎のパイは焼かれていた。
愛馬は今も厩にいた。
そして自分の部屋は、三年前のまま残されていた。
婚約者の家で、少しずつ名前を呼ばれなくなったクラリス。
けれど帰ってきた家では、何度も何度も名前を呼ばれる。
新しいことに挑戦して、失敗して、泥だらけで帰った日でさえ――。
「お帰りなさいませ」
いつもと同じように迎えてくれる人たちがいた。
これは、帰る場所を失ったと思っていた令嬢が、ずっと自分の居場所はなくなっていなかったと知り、もう一度歩き出すまでのお話。
※家族と使用人と村人が、ひたすら主人公を大切にするお話です。