あらすじ
人の名前を忘れた頃、植えた覚えのない花が咲くことがある榛野町。
四十八歳の高瀬早紀は、軽度の認知症と診断された八十一歳の母・澄江を毎週土曜日に訪ねている。
母は料理も買い物もこなし、娘の好みも覚えている。
ただ、人の名前だけが少しずつ出てこなくなっていた。
庭に咲いた白い花を、町では昔から「名前花」と呼ぶ。
母が忘れた名前と花を記録すれば、抜けていくものをつなぎ止められる。
そう考えた早紀はノートを作る。
けれどある日、母は尋ねる。
「あなた、名前なんだったかしら」
それなのに、早紀の花はどこにも咲かなかった。
名前を忘れることは、その人を忘れることなのか。
母娘の間に残る日常を描く、少し不思議で静かな全4話のヒューマンドラマ。