あらすじ
痩せれば、幸せになれると思っていた。
三十五歳の会社員・水野香澄は、七年間付き合った恋人との別れをきっかけに、九十日間のダイエットを始める。
体重が減るたびに増えていく、SNSのフォロワー。
「きれいになった」
「意志が強い」
「私も見習いたい」
その言葉に励まされ、香澄は食事を減らし、眠る時間を削り、自分を追い込んでいく。
しかし、前日より六百グラム増えた朝、香澄の日常は崩れ始める。
食べることが怖い。
体重を測らなければ落ち着かない。
数字が増えた日は、自分には価値がないと思ってしまう。
そして九十日目を目前にした朝、香澄は駅のホームで倒れる。
彼女を助けたのは、小さな食堂を営む六十四歳の女性・静江だった。
「体重計は、あなたが何キロあるかは教えてくれる。でも、今日どれくらい頑張ったかまでは教えてくれないよ」
食べること、自分を許すこと、誰かに助けを求めること。
これは、数字に支配された一人の女性が、誰かの理想ではなく「今日の自分」を生き直すまでの物語。
人生は、減らすためにあるのではない。
何を選び、誰と笑い、どんな明日を残していくか。
その積み重ねなのだ。